池袋・新文芸坐にてオールナイト上映レポート
本作の公開を記念して、3月11日(土)、池袋・新文芸坐にて<『雑魚どもよ、大志を抱け!』公開記念 足立紳 全ての弱虫たちへ>と題したオールナイトが開催され、『雑魚どもよ、大志を抱け!』上映後のトークショーに、足立紳監督の他、隆造の母、村瀬美奈役で出演した河井青葉さん、校長先生役で出演した坂田聡さん、MCは映画評論家の森直人さんが登壇しました。
トークショーで、足立紳監督は「本作は、20年以上前に丁稚のような形で師事していた相米慎二監督から初めて褒められたシナリオ『悪童』が原形。それを小説『弱虫日記』として執筆し、今回『雑魚どもよ、大志を抱け!』として映画化になりました。『ションベン・ライダー』(83・相米慎二監督)で主演の永瀬正敏さんには、今回、相米監督へのオマージュとして出演をお願いしました。『ションベン・ライダー』では、デビュー作だった永瀬さんが藤竜也さんにボコボコにされるシーンがあるのですが、本作では逆に、恐い大人として少年たちに接してもらいました」と相米作品や永瀬への想いを語りました。永瀬さんと共演された印象をきかれた河井青葉さんは「ハードなシーンがありましたが、憧れの映画俳優とご一緒できて嬉しかった」と語り、坂田さんは「河井美智子さんが大好きで『ションベン・ライダー』ももちろん観ています。あと『セーター服と機関銃』(81・相米慎二監督)も長まわしが大好き。本作の長まわしも痺れました。相米やってんじゃん!と(笑)」と振り返った。
脚本家として参加した作品でもよく現場に行くという足立監督に、河井さんは「俳優からすると脚本家の方が現場にいると少し緊張しますが、足立監督はそんな空気はまったくない」と語り、足立監督は「脚本家は寂しい、書いたら用なしという感じがあるので、なるべくみんなで作っている現場にいたいんです。本当は書く作業が大嫌いで笑」と本音を垣間見せる場面も。河井さんについて足立監督は「河井さんの声が大好きなんです。古き良き時代の日本映画の女優さんの雰囲気、賢くて聡明な感じを纏われていて『お盆の弟』(15・大崎章監督、足立伸脚本)で、そういう役を演じていただきぴったりでした」を語り、坂田さんについて「怪優ということばがぴったり。『百円の恋』(14・武正晴監督、足立紳脚本)もそうだし、『アウトレイジ』(10・北野武監督)の坂田さんが大好き。正体不明の人間を演じさせると天下一品です」と賞しました。
また河井さんと坂田さんは完成した本作を観た感想を「少年たちがみんな素晴らしくて落ち込むくらいでした(笑)」と、口を揃える。子どもたちは約1か月、親元を離れ飛騨市での合宿生活を送りました。足立監督は「みんな頑張ってくれました。特に池川(侑希弥)君と岩田(奏)君は演技がほとんど初めてで、大変だったと思います」と語り、続けて「瞬と隆造は、お互いに強く惹かれ合っている役なんですが、現場の待ち時間に、田代君と池川君が仲睦まじくしているのを見て、自然にそういう関係になっているから、僕が余計な事を言う必要はないと思いました」と微笑ましい一面を語り、トークショーを締めくくりました。
当日は、『雑魚どもよ、大志を抱け!』を公開前に鑑賞できる先行上映、足立監督のデビュー作であり、1987年の田舎町を舞台に、性への妄想を膨らませる中学生たちの姿を、バカバカしくも真面目に描いた青春劇『14の夜』(16)、足立監督が、中村義洋監督、窪田将治監督と組んだ連作ショートムービー『稽古場』(21)から足立監督作品『しちゃったね』(21)の上映の他、足立監督が師事した故・相米慎二監督の1983年に一般公開された青春冒険映画『ションベン・ライダー』を上映。本作でスクリーン・デビューを果たした永瀬正敏さんは、『雑魚どもよ、大志を抱け!』で、7人の小学生の一人、村瀬隆造の父親、顔に火傷跡が残る強面ヤクザ・村瀬真樹夫役として、重要な役どころを演じています。『ションベン・ライダー』当時、高校生だった永瀬正敏さんが父親役を演じ、その2作品の監督は師弟関係という40年の時を経てまでも“縁”を感じることのできるプログラムで、来場の観客も大満足のオールナイトとなりました。