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東京国際映画祭ワールドプレミアティーチイン、足立紳監督登壇!

2022/10/26 21:00 up!

10月26日(水)丸の内ピカデリーにて、本作のワールドプレミアが実施されました。さらに足立紳監督が登壇しティーチインを行い、参加された一般のお客様から感想を交えた質問が飛び交い、足立監督より本作の見どころを語りました。

本作の時代設定を1988年にした理由について「コロナ禍の影響が強いです」と答えた足立監督。実は現代にしようか80年代を舞台にするかは迷いがあったという。「現代にすると(コロナ禍という)状況を避けては通れません。特殊な中でやる物語となると(内容を)変えなきゃいけない部分が出てきます」と話し、もうすぐ昭和が終わることも伝えたかったため1988年という時代設定にしたそう。

岐阜県飛騨市で撮影された本作。いくつかの県でロケハンを行ったが「一番イメージに合っていました」と飛騨市に決めた理由を明かし、ポスターを指差しながら「割とこのままの状態の町がありました」とロケ地として惹かれたポイントを語った。

イベントは観客からのQ&Aで進行。「勇気をふりしぼる」ことについてどのような思いを抱いているのかという質問に足立監督は劇中に登場した「学校に行けよ」という台詞がひっかかったと明かす。その理由について「嫌なら無理して行く必要はないという状況がある中で、僕自身が普段自分の息子に言っているのと逆のことを隆造(田代輝)に言わせてしまっていると感じました」と説明。描きたかったのは、どんな状況に置かれていても子どもたちは葛藤しながらも一生懸命がんばっていることだったとし、「僕自身、勇気の持てない時期をかなり長く歩んできています。(振り返ると)あのとき、あと1ミリでも勇気があればという局面が1000回くらいある人生でした」とはにかみながら「もしかしたら、人生が好転することがあるかもしれないことは伝えたいし、自分自身にもそう言いたいという気持ちがありました」と丁寧に解説した。

主演の池川侑希弥について「言葉数は少ないけれど、自分の思っていること、実感の持てることだけを話しているような気がしています。特にいいことを言おうと思っていない、借り物じゃない言葉で一生懸命喋っている感じで、人間的な素直さやまっさらな感じをとても眩しいと感じたのを覚えています」とオーディション時の印象とともに語った。

池川を含めたメインキャラクターの少年7人は全員オーディションで選ばれ、クランクインまで2ヶ月という時間をリハーサルに費やした。足立監督がリクエストしたのは「ひたすら台本を読むこと」だった。「特別なことはせず、1日1回どのシーンでもいいから(台本に)目を通すよう伝えました。彼らは当然この時代を知らないから、触れ続けてほしいという思いがありました」とリクエストの理由にも触れていた。ロケ地の飛騨にはクランクインの4、5日前に入ったという。わずかな時間だったが、(現地で)生活するように過ごす中で映画の中の人間関係を築いていく様子がはっきり見えたそう。「本番じゃないときでも、いい意味で役が抜けていないのがいいなと思っていました」と語った足立監督は撮影当時を思い出した様子で優しい笑みを浮かべていた。

観客からは、相米慎二監督への思いが感じられる部分があるという指摘もあった。「相米さんを目指すとか、そんな大それたことは考えていません」と照れながら「実はシナリオの原形を初めて読んでいただいたのは相米さん。最初の20分はストーリーがなく少年たちが延々といたずらを繰り返すものでした。それが2時間続くシナリオを読んだ相米さんから初めて褒められて…。有頂天になり『僕もシナリオを書けるかもしれない』と少しだけ思った瞬間でもありました」とニヤリ。また、長回しシーンにも触れ「現場スタッフとしては、長回しはやっていて楽しいので、最初の20分をワンカットでやってみたいという思いはありました」と打ち明けた。

最後の挨拶で足立監督は「これからの7人が出ている作品です。作品を観てよかったと感じていただけたなら、少しでも多くの方に映画の存在を知ってもらえるよう、ご協力いただけたらうれしいです」と呼びかけイベントを締めくくった。

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